星に願いを ■

 

ハンドルを握る彼の長い指を,私はただ黙って見つめていた。
左手の薬指のゴールドのリングが時折光を反射するので,
そのたびに私は現実の世界に引き戻された。
冷房の効いた車内では,ラジオから流れてくる軽快なFENのDJの声が空回りしている。
普段は饒舌な彼が,ハンドルを握っているときに無口になるのはよくあることだった。
久しぶりに会う彼は,仕事が忙しかったせいか,少しやつれて見えた。
曇り空だったせいかもしれない。
時折雲の隙間から顔を出す太陽は弱々しくて,とても夏の日差しとは思えなかった。

彼から久しぶりに電話をもらったのは昼前のことだ。
いつものように掃除と洗濯をすませ,冷房のスイッチを入れてリビングのソファに腰掛け,
読みかけの文庫本を手に取ったとき,携帯電話が着信を告げた。
彼からの電話は,必ず夫の留守中に鳴る。
月の半分以上は出張で留守にする夫は,今日もご多分に漏れず海外出張中だった。
「・・・もしもし?」
いつものように電話の一言目は遠慮がちだったが,
私が一人だとわかると,少しキツい,いつもの口調に戻った。
軽くお互いの近況を報告し終わった後,彼は
一時間後に迎えに行くから,と一方的に告げ,電話を切った。

 

- to be continued ! -

 

*** *** ***

- ambivalence - 

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